上水道と下水道の現場
上水道と下水道の各処理工程では、ガスによる危険が潜んでいます。各処理工程とガスによる危険性・対応するガス検知器を、イラストを交えてご紹介しています。
上水道と下水道の各処理工程では、ガスによる危険が潜んでいます。各処理工程とガスによる危険性・対応するガス検知器を、イラストを交えてご紹介しています。
川などから取り入れた水を浄水場で殺菌・消毒して飲み水にすることで、各家庭や工場へ供給しています。
川の水が飲み水になるまでの工程の一例は、次の通りです。
原水は、混和池でポリ塩化アルミニウムなどの疑集剤を注入され攪拌されます。
すると、原水中の浮遊物が微小な粒子のかたまり(フロック)になり、フロック形成池でくっつくと、
大きなフロックに成長します。
大きなフロックは沈でん池で沈でんされます。
疑集剤のポリ塩化アルミニウムは、次亜塩素酸類(次亜塩素酸ソーダ、漂白剤、サラシ粉、カルキ等)と混合すると塩化水素ガス(HCl)を発生するため、注意が必要です。
作業前、作業中の環境濃度確認用
Model:SC-9000
原水の処理方法には、高度浄水処理と呼ばれる方法があります。
高度浄水処理は、オゾンの酸化力でカビ臭原因物質などを分解し、生物活性吸着池で活性炭への吸着作用と微生物の分解作用を併用することにより汚濁物質を処理します。
高濃度のオゾン(O3)が使用されるため、万が一の漏洩に注意が必要です。
作業前、作業中の環境濃度確認用
Model:SC-9000
定置型O3用検知部
Model:GD-70D
ろ過した水に塩素剤(次亜塩素酸ナトリウム)を加えて消毒します。
塩素剤(次亜塩素酸ナトリウム)は酸性の溶液と接触すると、塩素(Cl2)を発生するため、注意が必要です。
各家庭や工場などから出てくる汚水や、雨水は、下水として主に道路の下に埋めてある下水道管で集められ、下水処理場に運ばれます。
下水道管で下水を流す方法には、分流式と合流式があります。
分流式は、汚水を汚水管、雨水を雨水管で、別々の下水道管に流す方法です。
合流式は汚水も雨水も一緒の下水道管に流す方法です。
本資料では分流式の工程を示します。
下水道管内での事故事例から、以下の点に注意が必要です。
・発電機等の不完全燃焼による一酸化炭素(CO)発生
・汚泥や有機物からの硫化水素(H2S)発生
・地中から漏出した可燃性ガス(CH4、C3H8)の滞留
また、様々な理由から下水道管内が酸欠雰囲気になる可能性があります。
下水道管を通って運ばれた下水は、大きなゴミや、土砂を沈でんさせて取り除きます。
汚泥等の有機物から発生する硫化水素(H2S)が密閉箇所で滞留し高濃度になる可能性があります。
沈砂池の酸素(O2)が消費され、且つ、換気が十分でない場合は酸欠雰囲気になる可能性があります。
最初沈でん池では、小さなゴミや砂を沈でんさせて取り除きます。
汚泥等の有機物から発生する硫化水素(H2S)に暴露する可能性があります。
また、最初沈でん池で酸素(O2)が消費され、且つ、換気が十分でない場合は酸欠雰囲気になる可能性があります。
曝気槽(反応槽)では下水にバクテリアや原生動物のような微生物の入った汚泥(活性汚泥)を混ぜて空気を吹き込み、下水中の汚れを微生物が分解します。
曝気槽で発生した硫化水素(H2S)とアンモニア(NH3)が滞留し、高濃度になる可能性があります。
曝気槽で酸素(O2)が消費され、且つ、換気が十分でない場合は酸欠雰囲気になる可能性があります。
反応槽でできた活性汚泥を最終沈でん池で沈でんさせ、上澄み(処理水)と汚泥とに分離させます。
屋外に最終沈でん池がある場合は、ガスに起因する危険性は少ないと考えられます
高度処理とは、通常の処理法で得られる水質をさらにきれいにする処理方法のことです。
一例として、嫌気槽・無酸素槽・好気槽で構成されるA2O法があります。
A2O法の各過程で発生する、硫化水素(H2S)、一酸化二窒素(N2O)、硝酸(HNO3)、アンモニア(NH3)等のガスが 作業者のいる環境雰囲気に漏洩する可能性があります。
また、設備の保守・点検時も注意が必要です。
最終沈でん池の上澄み(処理水)を塩素消毒して大腸菌などを消毒し、きれいになった下水処理水を河川や海に放流します。
塩素剤から塩素ガス(Cl2)が発生する可能性があります。
薬剤の保管場所など、発生したガスが滞留しやすい場所では注意が必要です。
定置型Cl2用検知部
Model:GD-70D
作業前、作業中の環境濃度確認用
Model:SC-9000
最初沈でん池や最終沈でん池で底に沈でんした汚泥を処理して、セメントの原料や肥料、エネルギー資源などとして有効利用されます。
汚泥から発生する硫化水素(H2S)や、汚泥の発酵処理で発生するメタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)による中毒、爆発、酸欠に注意が必要です。
また、汚泥の脱水・乾燥後に発生する一酸化炭素にも注意が必要です。
定置型CO2用検知部
Model:RI-600
定置型可燃性用検知部
Model:SD-1
作業前、作業中の環境濃度確認用
Model:GX-9000
作業者携帯用
Model:GX-3R
下水道管を設置する工事を、管きょ工事と言い、次の3種類があります。
・開削工法:地表から掘って管きょを入れていく方法です
・推進工法:機械で掘進しながら地中に管きょを押し進めていく方法です
・シールド工法:地中にトンネルを掘り、セグメントと呼ばれる円弧状のブロックをリング状につなぎ合わせ、管路とする方法です
地中や地下水、汚泥に含まれている硫化水素(H2S)や、メタン(CH4)の漏出に注意が必要です。
また、トンネル内の換気不十分による酸素欠乏にも注意が必要です。
作業者携帯用
Model:GX-3R
作業前、作業中の環境濃度確認用
Model:GX-6000
定置型ガス検知部
Model:SD-1シリーズ
浄水処理工程で使用される薬剤から発生するガス、及び、反応の過程で生成されるガスが滞留し、作業者への影響が懸念される場合があります。
下記の用途には定置式ガス検知部、及び、ポータブルガス検知器が有効です。